四六判並製232頁
定価:2200円+税
ISBN:978-4-910904-01-6
刊行日:2023年11月18日

奥歯を噛みしめる
詩がうまれるとき
キム・ソヨン 姜信子監訳 奥歯翻訳委員会訳

心の傷もわかりあえなさも、
すべてを詩にしたとき、母を愛せるようになった——。
痛みの声を聴く詩人が、母、父、心の傷、そして回復までの日々を語る。

奥歯を噛みしめて耐えること、奥歯を噛みしめて愛すること。
何もできなかったあのころ。それは、詩のうまれゆく時間であった。

生きることそれ自体が、詩になる。
それは特別なことではなく、
あなたの人生もまた詩なのだ。
寒さに震える心をそっと包み込む、かぎりなくあたたかな30篇のエッセイ。
「日本の読者へ」と、三角みづ紀(詩人)による応答エッセイを付す。

著者について

キム・ソヨン
詩人。詩集に『数学者の朝』(クオン、2023)、『極まる』、『光たちの疲れが夜を引き寄せる』、『涙という骨』『 iへ』ほか。エッセイ集に『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン、2021、第8回日本翻訳大賞)、『心の辞典』ほか。露雀洪思容文学賞、現代文学賞、李陸史詩文学賞、現代詩作品賞などを受賞。

訳者について

姜信子(きょう・のぶこ/カン・シンジャ)
作家。横浜生まれ。主な著書に『語りと祈り』、『はじまれ、ふたたび いのちの歌をめぐる旅』、『現代説経集』、『声 千年先に届くほどに』、『棄郷ノート』、山内明美との共著『忘却の野に春を想う』ほか多数。編書に、谺雄二『死ぬふりだけでやめとけや 谺雄二詩文集』、『金石範評論集Ⅰ 文学・言語論』、『金石範評論集Ⅱ 思想・歴史論』。訳書に、『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン、第8回日本翻訳大賞)、李清俊『あなたたちの天国』、ホ・ヨンソン『海女たち』(共訳)ほか。

奥歯翻訳委員会

李和静、佐藤里愛、申樹浩、田畑智子、永妻由香里、バーチ美和、ほとりさよ、松原佳澄
『詩人キム・ソヨン 一文字の辞典』(クオン)で第8回日本翻訳大賞を受賞。

目次

日本の読者へ
はじめに

1
母を終えた母

2
口があるということ
慶州市千軍洞の敵産家屋
振り返らせる
歩いてそこへ行く
少し違うこと
懐中電灯を照らしながら歩いた夜
場所愛 topophilia
間隙の卑しさの中で
祈りをしばしやめること
私を煩わせる「無」
パンと彼女
失敗がきらめく
「積ん読」と「積ん読の対義語」
無能の人
あらゆる者の視点

3
儚い喜び

4
「途方もなさ」について
じたばたのつぎのステップ
音なき岩
皮膚を剥がす
奥歯を噛みしめる
わたしが詩人なら
楯突く時間
得る
二〇三〇年一月一日 火曜日 晴れ
明日は何をしようか
木の箸と木彫りの人形
平和であれ

5
二箱の手紙

忘れないために、手放すために 三角みづ紀

監訳者あとがき たとえ奥歯はすりへろうとも

書評情報

奥間埜乃(詩人)

  • 「詩の原理的なありかたが横断し織り込まれている「詩論」」
    図書新聞 3628号

小池昌代(詩人)

  • 「なぜ詩を求め、探すのか」
    琉球新報1/28、大分合同新聞1/28、京都新聞2/3、東奥日報2/7、徳島新聞2/4ほか(共同通信配信)

奥田直美(カライモブックス店主)

  • 熊本日日新聞 2024年1月28日 読書面

田尻久子(橙書店・オレンジ店主)

  • 西日本新聞 2024年1月6日