四六判上製288頁
定価:3200円+税
ISBN:978-4-910904-03-0 C0010
装幀:須山悠里
装画:エレナ・トゥタッチコワ
刊行日:2025年10月2日

生類の思想 体液をめぐって
藤原辰史

大気・海洋・土壌汚染、アレルギーの増加、免疫の不調、日常化する暴力、子どもの商品化、奪われる睡眠時間……。この世界の現実をどう捉えるか。
「人間」と「環境」を根源から定義しなおし、ありえたかもしれないもうひとつの世界を描きだす。
世界の高速回転化と自己攻撃化にあらがう、驚くべき思考の集成。

■著者からのメッセージ

人びとを「生き生きとさせないもの」とはなにか——。とくに、この列島を生きる子どもたちをみていると、そんな残酷な問いが頭から離れなくなります。子どもたちを元気づける歌をうたったり、笑わせたりすることが緊急の課題なのかもしれませんが、そんな芸当はもちろん私にはできません。ですからせめて、「生き生きとしている」とはどういうことなのか、それを邪魔しているものはなんなのか、という問いにとことんつきあってみました。本を読んだり、旅をしたり、目をつぶったりしながら考えていると、どうやらこの社会には、「もれる」や「たかる」が足りないのではないか、と思うようになりました。その考えにいたった経緯をこの本にまとめてみましたので、手に取っていただければ幸いです。

藤原辰史 

第25回(2026) 小林秀雄賞受賞!

著者について

藤原辰史(ふじはら・たつし)
1976年生まれ。京都大学人文科学研究所教授。専門は農業史、環境史。
著書に『ナチス・ドイツの有機農業』(2005年、柏書房、第1回日本ドイツ学会奨励賞)、『カブラの冬』(2011年、人文書院)、『ナチスのキッチン』(2012年、水声社、のち決定版:2016年、共和国、第1回河合隼雄学芸賞)、『稲の大東亜共栄圏』(2012年、吉川弘文館)、『食べること考えること』(2014年、共和国)、『トラクターの世界史』(2017年、中公新書)、『戦争と農業』(2017年、集英社インターナショナル新書)、『給食の歴史』(2018年、岩波新書、第10回辻静雄食文化賞)、『食べるとはどういうことか』(2019年、農山漁村文化協会)、『分解の哲学』(2019年、青土社、第41回サントリー学芸賞)、『縁食論』(2020年、ミシマ社)、『農の原理の史的研究』(2021年、創元社)、『歴史の屑拾い』(2022年、講談社)、『植物考』(2022年、生きのびるブックス)、『食権力の現代史』(2025年、人文書院)などがある。

目次


はしがき

Ⅰ わずらう
体液をめぐる思考——生類の思想が編み直されるところ
慢性と急性——人文学的省察
「自己する」の不調——アレルギー時代の人文学的考察

Ⅱ あそぶ
家庭科の哲学——「人間する」を遊ぶ
墨色と泥色の記憶——かこさとしの絵の淡い濁りについて
子どもの商品化に抗する思想
いま環境について考えるとはどういうことか

Ⅲ はぐくむ
農業技術への問い——ハイデガーの概念「はぐくむ hegen」について
土の思想をめぐる考察——脱農本主義的なエコロジーのために
さつまいもと帝国日本
賢治と道子をつなぐもの——「植物医師」と硫安

Ⅳ たべる
培養肉についての考察
食の闇について
人間チューブ論——食のダイナミズムを考える
エディブル・プラネット

Ⅴ まじる
「規則正しいレイプ」と地球の危機
表皮の脱領域的考察
もれる——膜が食い破られること
「たかり」の思想——食と性の分解論

あとがき
初出一覧
人名索引

書評情報

長谷川大

  • 「石牟礼道子を新たに読むための6冊」
    『文藝別冊 石牟礼道子 増補新版』 河出書房新社、2026年

中島岳志(政治学者)

  • 「人と環境をつなぐ、いのちの「流域思考」
    季刊 地域 2026年春号(No.65)

斎藤環(精神科医)

  • 「生命あるものは同類 地球に生きる意味」
    毎日新聞 2026年2月21日

奥山淳志(写真家)

  • 「生類に満ちた地球を語る新たな思惟の誕生を告げている」
    『みすず読書アンケート 2025』

野崎歓(フランス文学)

  • 「刺激的なアイデアあふれる自在な展開に目を見張らされる快著」
    『みすず読書アンケート 2025』

姜信子(作家)

  • 「私たちの生の根源、立ち返るべき出発点の話である」
    『みすず読書アンケート 2025』

斎藤真理子(韓国語翻訳者)

  • 「体液の循環という枠組みで世界を捉えた清新な本」
    『みすず読書アンケート 2025』

十川幸司(精神分析、精神医学)

  • 「「石牟礼道子への挑戦」でもある本書は、彼女の魂を別の形で継承している」
    『みすず読書アンケート 2025』

緑慎也(サイエンスライター)

  • 「生類の思想の現代版を提示する」
    週刊読書人 2026年 2月13日号

伊藤亜紗(美学者、東京科学大学教授)

  • 「人文学と自然科学のあいだに横たわる凝り固まった相互無理解の溝を、柔らかく解きほぐしていく」
    「2025年 わたしのベスト3」『文藝春秋』 2026年1月号

湯澤規子(人文地理学、法政大学教授)

小林えみ(マルジナリア書店店主、よはく舎代表)

諏訪敦(画家、武蔵野美術大学教授)

  • 「環境と身体、考察が混じり合うところ」
    芸術新潮 2026年1月号

天ぷらそば食べよ(河出スタッフ)

  • Web河出「なんでこの傑作がうちの本じゃないの⁈」本読み河出スタッフが選んだ今年のベスト本2025年版
    「思考するって、こういうこと!」
    https://web.kawade.co.jp/column/174975

植田将暉(早稲田大学大学院法学研究科、ゲンロン編集部)

四方田犬彦(比較文学・映画誌)

  • 「2025年下半期読書アンケート」
    図書新聞 3716号(2025年12月20日)

福嶋聡(書店員)

  • 書標(丸善ジュンク堂書店) 12月号

雑賀恵子(農学言論/社会思想)

  • 「「当然」の世界の在りようを揺るがせる——環境の代わりに「生類」ということばを基盤に据え生存に対する暴力について考える」
    図書新聞 3715号(2025年12月13日)
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